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人文知を守り、未来につなげたい

理事

大林 剛郎

株式会社大林組代表取締役会長

人文知を守り、未来につなげたい

理事

大林 剛郎

株式会社大林組代表取締役会長

 我々の日常を考えますと、生活に直結するイノベーションやテクノロジーに関する話題がメディアで大きく取り上げられ、人々の関心もそちらに集まりがちですが、一方で、人文知の重要性は誰もが本質的には理解していることもまた事実だと思います。私はこの応援フォーラムの活動を通して、古くから蓄積されてきた人文知を守りたいと考えています。コロナ禍を通じて我々はこれまでの価値観と生活様式を見つめなおし、大きく変えることを迫られました。このタイミングで人文知応援フォーラムが立ち上がったことに非常に大きな意味を感じています。人文知を守りこれからの世代につなげることで、人文知とこの国のより良い未来をつくっていきたいと考えています。

人文知は活きて働く

代表理事

大原 謙一郎

公益財団法人大原美術館名誉館長(元株式会社クラレ副社長)

人文知は活きて働く

代表理事

大原 謙一郎

公益財団法人大原美術館名誉館長(元株式会社クラレ副社長)

 私は美術館の経営者です。「文化・芸術・人文学の伝道師」が仕事です。その前はいわゆる「企業戦士」でした。化学企業と銀行に在籍していました。
 仕事で付き合った世界の事業リーダーたちは皆、豊かな見識を備えた魅力的な教養人でした。彼らと対等に渡り合うためには日本のリーダーも「人文知」を身につけなければならないと、しみじみ感じさせられました。
 「人文知って何だ?」と聞かれても私にはうまく答えられません。ですが、人文知は、世界各地で活きて働いています。優れた仕事の背後には優れた人文知が隠れています。
 今後とも、この場で、「活きて働く人文知」を応援し続けたいと思います。

総合人間力の大切さ

理事

奥 正之

株式会社三井住友フィナンシャルグループ名誉顧問

総合人間力の大切さ

理事

奥 正之

株式会社三井住友フィナンシャルグループ名誉顧問

 私自身、大学時代の自由さに浸りきり、教養課程を等閑にしてしまったこともあり、人文知からは程遠い存在でありました。そこにショックを与えたのが海外留学とその後の国際ビジネス体験でした。専門知識に限らないリベラルアーツ(教養)の必要性を認識し、「知・徳・体」のバランスが取れた総合人間力の大切さを教えられたのです。
 ビジネスの世界でテクノロジーをビジネスモデル化するには、今や教養の要素は欠かせません。即ち、文理の融合です。また、教養は心を豊かにしてくれる生涯の友であり、自身を陳腐化させずに新しい道へと導いてくれる人生の補助線・導線とも言えましょう。「豊かなる衰退」の岐路に立つ日本の未来を担う人づくりのために、微力ながらこのフォーラムを応援していきたいと思います。

人間文化研究機構との連携事業の推進

理事

木部 暢子

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 機構長

人間文化研究機構との連携事業の推進

理事

木部 暢子

大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 機構長

 人間文化研究機構を構成している6機関(国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所および国立民族学博物館)は、いずれも人間文化に関する大量の資料を収集し、これを研究者や市民に提供すると同時に、これらのデータに基づいて日本及び世界各地の歴史・文化・文学・言語・社会・自然環境などに関する研究を行っています。
 資料や研究を通じて思うのは、人間の文化がいかに多様かということ、また時間や空間を超えて共通する部分も多いということです。『月刊みんぱく』2022年6月号の溝口尚美氏(ドキュメンタリー映画「Ainu ひと」監督)の巻頭エッセイによると、「アイヌ」はアイヌ語で「人間」を意味しますが、北・南米の多くの民族名も同じように、その民族の言葉で「人間」を意味するといいます。言葉はそれぞれ違っていますが、発想は同じです。
 人間文化の多様性や共通性がいかにして形成されたか、その過程には「人文知」が凝縮されています。本フォーラムと連携して、それを社会に広めていきたいと思います。

人文知への大いなる期待

理事

草野 満代

フリーアナウンサー(国土交通省 社会資本整備審議会委員)

人文知への大いなる期待

理事

草野 満代

フリーアナウンサー(国土交通省 社会資本整備審議会委員)

 コロナ禍でこれまでにない不安とストレスに押し潰されそうになります。明日は今日の続きだと盲信していた頃が懐かしくもあります。
 そんな中で、ある知り合いの若い哲学者と「心」について話しをする機会がありました。英語のheartではない「こころ」についてです。ほんの1時間ほどの語らいが私の干上がりそうなココロを救ってくれました。生物学的か、経済的な価値かに囚われがちなこの困難時にあって、社会の中で、歴史の中で存在する人間として、どう生きるべきかへと話は続きました。
 目先の成果や利益を追うことに腐心するのではなく、不確実な世界を強く生きるための柔らかな心を持ちたいと願います。
 そのための大きな手助けに、人文知がなってくれると信じています

「人文知」は先人の叡知から

代表理事

近藤 誠一

近藤文化・外交研究所代表(元文化庁長官)

「人文知」は先人の叡知から

代表理事

近藤 誠一

近藤文化・外交研究所代表(元文化庁長官)

 「留まれ、お前はいかにも美しい」(ゲーテ『ファウスト』)

 人はどう生きるべきか、あるべき社会とは。。。この永遠の問がいま改めて問われています。現代の人間は経済、テクノロジー、学問の専門性に閉じこもり、目先の富と権力の追求に走り、その結果自然に負荷をかけ、自らのガバナンスを行き詰まらせているからです。
 この隘路から脱して上記の問いに真剣に立ち向かうためには、「人間はどうあるべきか」という本来の目的に立ち返らねばなりません。そしてそれは必然的に「そもそも人間とは何か」という根源的な問に導きます。それに答えるのが人文知です。それは先人が言語化、芸術化してくれた叡知に見出すことができます。
 哲学、医学、神学などすべての学問を極め、享楽を尽くしながらなお満足できなかったファウスト博士に冒頭の言葉を叫ばせたのは、最高の知識でも、巨万の富や歓楽でもなく、自由な土地で日々自由に働く勤勉な市民の姿だったのです。

「人間の知」としての人文知

理事

高階 秀爾

美術評論家、公益財団法人大原美術館館長

「人間の知」としての人文知

理事

高階 秀爾

美術評論家、公益財団法人大原美術館館長

 人文知とは、「人間(について)の知」です。かつて古代ローマの劇詩人が「私は人間だ、人間的なものはすべて私には無縁ではない」と述べたその「人間知」です。具体的には「人間知」の習得涵養は、「教養」の理念”Everything of something, something of everything”と結びつきます。人はある分野(専門領域)については、徹底してすべてを知らなければならないと同時に、他のあらゆる分野についても、何ほどかの知識を持たねばなりません。人間として生きるとはそういうことです。「学問・文学(litterae)のない人生は死である」と哲人セネカも言っているように。

21世紀を支える人文知

理事

中嶋 さち子

steAm 代表取締役、(一社)steAm BAND代表理事

21世紀を支える人文知

理事

中島 さち子

steAm 代表取締役、(一社)steAm BAND代表理事

 私は数学・音楽・STEAM教育などの分野で 活動しており、steAm(AはArts:人文知)という会社を経営しています。私にとっては数学と音楽と人生は「創造的」な点で似ており、答えは一つではないどころか問いそのものを生み出す喜びがある。そして、創造性とは本質を見抜く、気づくことでもあり、それは人文学を常に内包すると感じています。
 多くの分野で専門性が深まり分断も生み出した20世紀に対し、インターネット誕生の影響を大きく受けた21世紀は、「大きな存在が作った約束事や境界線」を崩し、改めて一人一人いのちの多様な可能性を問い直す激動の時代と感じます。そこでは人文知が今まで以上に求められており、一人一人、土地土地に脈脈と息づく多様な何かに気づき、未来に繋げていく力が問われています。
 激動の21世紀を支えるのは人文知である、私はそう考えています。

テクノロジーと人類の調和

理事

長谷山 彰

国立大学法人 北海道国立大学機構 理事長、慶應義塾学事顧問

テクノロジーと人類の調和

理事

長谷山 彰

国立大学法人 北海道国立大学機構 理事長、慶應義塾学事顧問

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界を鎖国状況に追い込み、グローバル化の動きが急停止しました。ヒト・モノ・カネが国境を越えて流動するグローバル化の波にのってウイルスも拡散しています。
 人々が分断され、孤立する中で、閉塞感が広がり、いわれなき差別や誹謗中傷が横行し、時に暴力が吹き荒れました。他方で、オンラインを活用した会議や癒しの動画発信など、ICTに代表される新しいテクノロジーが人々の絆を取り戻す動きも見られます。
 テクノロジーか人間か、科学か人文学かという二項対立ではなく、人間性を回復し、テクノロジーと人間の調和を可能にするために、しなやかな知性と感性に裏付けられた総合的な人文知の働きが求められています。

科学や技術の推進・振興にも
人文知が必要である

理事

福岡 伸一

生物学者(青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員研究者)

科学や技術の推進・振興にも
人文知が必要である

理事

福岡 伸一

生物学者(青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員研究者)

 C・P・スノーがかつて『二つの文化』の中で述べたとおり、世界を人文知(The humanities)と理系知(The sciences)に分断することは、世界を視るための、総合的な視点、統合的な思考を大きく損なうことになると思います。若い人たちの進路を早い段階から文系と理系に分けてしまうこともあまりよいことではないと考えます。昨今、特に、人文知の危機が懸念されていますが、科学や技術を推進・振興する上で、人文知がもたらしてくれる時間軸、歴史軸がより必要になることを訴えていきたいと思います。わたしの専門に関していえば、生命科学を考える上で、生命哲学や生命観の変遷、生物学史といった人文知がなくてはならないと考えています。

日本人と人文知

理事

松元 崇

国家公務員共済組合連合会理事長(元内閣府事務次官)

日本人と人文知

理事

松元 崇

国家公務員共済組合連合会理事長(元内閣府事務次官)

 日本には様々な人文知があります。禅においてしかり、俳句においてしかりです。私は、六十の手習いでお茶を始めました。お茶は中国伝来ですが、千利休が日本文化の原型として確立しました。それが庶民だけでなく、江戸時代には大名茶として、明治以降は経済人のお茶としても親しまれてきました。それは、お茶が、社会が大きく変化していく中でも、人々が自らの原点に立ち返るよすがであり続けてきたからです。新型コロナの脅威が広がり、変化が激しく不確実で複雑、曖昧(VUCA)といわれる時代になっているからこそ、人々がその原点に立ち返ることが、日本の発展に、そして一人ひとりの幸せにつながるはずです。多くの人に、人文知の応援に加わっていただきたいと思います。

人文知を選択の視座に

理事

虫明 優

株式会社三楽 代表取締役

人文知を選択の視座に

理事

虫明 優

公益財団法人大原美術館理事(前副館長)

 グローバルかグローカルか、画一的効率か多様性か、協調か分断か、世の中の価値基準が揺らぎ、混沌とした時代になってきました。「こうした時こそ人文知を基準にした判断が求められる」という思いから発足したのが「一般社団法人人文知応援フォーラム」です。 それだけに、法人としての姿勢は正しく保たれなければなりません。運営に瑕疵なきよう配意すると同時に、コンプライアンスを重視した「善き市民」としての組織のあり方を実現するよう不断の努力が必要です。 これまで公益法人の設立・運営に関わってきた経験を活かし、法人の姿を整え、人文知への意識を高めるためにお役に立てれば幸甚に存じます。

人文知はもらうものではなく自分で作るものだ

理事

和久井 康明

株式会社クラレ社友(元社長、会長)

人文知はもらうものではなく自分で作るものだ

理事

和久井 康明

株式会社クラレ社友(元社長、会長)

 若い頃、教養とは何かという問いに、「学校で教えられること以外に自分で学習したことである」という回答を聞いたことがある。大学に入学してしばらくすると講義とその内容に失望して勉強すべき貴重な時間を他のことに費やしてしまう人は多いと思う。若気の至りではあるが、私もそうであった。経済学部に進学してからの2年間は、私は毎日大学に入ったが、それは昼食を食べるためと図書館で適当に本を選んで読むためであり、講義には出たことがなかった。私はモンテーニュが好きだ。彼は「我々は他人の意見や学識をしまい込む。そしてそれで終わりだ。それらを我々のものにしなくてはならない」と述べている。教養をわがものにすることが人文知を創るのであろう。

心豊かな社会を求めて

理事

渡辺 美代子

日本大学常務理事,NPO法人ウッドデッキ代表理事

心豊かな社会を求めて

理事

渡辺 美代子

日本大学常務理事,NPO法人ウッドデッキ代表理事

 学問は誰のためにあるのか。それは社会のすべての人のためであると考えます。社会の人々の背景と考え方は時代とともに変化しますが、特に今の日本は人口縮小や人工知能の浸透など、大きな歴史的変換点を迎えています。科学技術の進展に伴い経済的に豊かな社会が実現されてきたこれまでとは異なり、これからは人々の心の豊かさが社会に求められ、そのための学問がより重要な時代となります。今こそ、人文知が必要です。あらゆる学問とともに広い視野から人々の幸せを探り、未来に貢献できる人文知であるのために、人文知応援フォーラムで多くの方々と語り合うことを楽しみにしています。

今こそ求められる『人文知』~経済界の立場から~

スペシャルアドバイザー

榊󠄀原 定征

日本経済団体連合会名誉会長(東レ株式会社社友 元社長・会長)

今こそ求められる『人文知』~経済界の立場から~

スペシャルアドバイザー

榊󠄀原 定征

日本経済団体連合会名誉会長(東レ株式会社社友 元社長・会長)

 日本経済、ひいては人類社会の発展にはイノベーションの創出が不可欠ですが、社会経済システムが複雑化し、価値観も多様化する昨今、特定の専門分野のみの探求では、その実現は極めて困難であり、自然科学のみならず、人文社会科学などの幅広い知識・教養を身に着け、人間社会を複眼的に捉える視点が必要となります。
 私はかねてより、経済界の立場から「人文知」の重要性を訴えており、国立大学改革の議論の際には、人文社会科学を含む幅広い教育が大切であることを主張し、政府方針に反映頂きましたが、こうした努力も奏功し、最近では科学技術基本法の改正や、同基本計画の検討にも「人文知」の重要性を取り上げて頂いたものと考えています。
 今回、本フォーラムへの参加を機に、諸活動を通じ、引き続き「人文知」の普及啓発に尽力したいと思います。